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建物管理者が知っておくべき水質検査の基準、検査項目、水質基準など

水は建物管理において非常に重要です。

その理由は、水が私たちの生活に密接に関わっており、利用する人々の健康にも影響するからです。最近でも、東京の多摩地域で水道水源の井戸水が発ガン性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS)で汚染されている問題が話題となっています。水道水を利用している住民の血中に高いPFAS濃度が見つかり、その後の経過が注目されています。

このように、水の管理は非常に重要であり、建物管理者は水道法やビル管理法に基づいた水質検査について知っておく必要があります。

この記事では、水質検査の内容や対象となる施設について解説していきます。建物管理を始めたばかりである、または水質検査に関心がある人は、ぜひ参考にしてください。

水質検査とは

水質検査は、水のおいしさに関する項目と、健康に関わる項目の2種類があります。

 水のおいしさに関わる項目の例

  • 色や濁りがないか
  • 変な匂いや味はしないか

健康に関わる項目の例

  • 大腸菌や水銀、カドミウムなどの有害物質が水に含まれていないか

日本の水は基本的には非常に安全でおいしいものです。これは、後述する水道法ビル管理法などの法律によって、厳しい基準の水質検査が義務付けられているからです。水は私たちが生活する上で欠かせないものであり、飲み水や洗濯、入浴、トイレなどに使用されます。

このように私たちの身近にある水は、水質について細かな安全基準が設けられています。水質検査は、これらの安全基準を満たすために行われるものです。

なぜ水質検査が必要か

水質検査は、私たちが使う水が清潔で安全かどうかを確かめるために行われます。

水質検査を怠ると、社会や私たちの生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。実際に、水道水において大腸菌(O-157)が原因による事故が起きたり、産業排水によってイタイイタイ病などの健康被害が発生したことがあります。

これらは私たちの命に関わる問題であるため、水質検査は非常に重要なのです。

水質検査の種類

水質検査にはいくつかの種類があります。
私たちは飲料水や排水など、さまざまな目的で水を利用していますが、それぞれの用途に応じて検査項目や基準が異なるため、すべての水が同じ基準を満たすわけではありません。

水質検査を大まかに分けると、「水道法に基づく水質検査」、「ビル管理法に基づく水質検査」、「生活衛生の水質検査」、「井戸水の水質検査」などがあります。
今回の記事では、「水道法に基づく水質検査」と「ビル管理法に基づく水質検査」について具体的に紹介します。

水道法に基づく水質検査

「水道法に基づく水質検査」とは、私たちが日常的に飲んでいる水道水の検査のことであり、その品質は水道法に基づいて検査されます。この水質検査では、51項目にわたる厳しい基準が設けられています。

1 一般細菌 100以下(CFU/mL)
2 大腸菌 検出されないこと
3 カドミウム及びその化合物 0.003mg/L以下
4 水銀及びその化合物 0.0005mg/L以下
5 セレン及びその化合物 0.01mg/L以下
6 鉛及びその化合物 0.01mg/L以下
7 ヒ素及びその化合物 0.01mg/L以下
8 六価クロム化合物 0.02mg/L以下
9 亜硝酸態窒素 0.04mg/L以下
10 シアン化物イオン及び塩化シアン 0.01mg/L以下
11 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 10mg/L以下
12 フッ素及びその化合物 0.8mg/L以下
13 ホウ素及びその化合物 1.0mg/L以下
14 四塩化炭素 0.002mg/L以下
15 1,4-ジオキサン 0.05mg/L以下
16 シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2ジクロロエチレン 0.04mg/L以下
17 ジクロロメタン 0.02mg/L以下
18 テトラクロロエチレン 0.01mg/L以下
19 トリクロロエチレン 0.01mg/L以下
20 ベンゼン 0.01mg/L以下
21 塩素酸 0.6mg/L以下
22 クロロ酢酸 0.02mg/L以下
23 クロロホルム 0.06mg/L以下
24 ジクロロ酢酸 0.03mg/L以下
25 ジブロモクロロメタン 0.1mg/L以下
26 臭素酸 0.01mg/L以下
27 総トリハロメタン 0.1mg/L以下
28 トリクロロ酢酸 0.03mg/L以下
29 プロモジクロロメタン 0.03mg/L以下
30 ブロモホルム 0.09mg/L以下
31 ホルムアルデヒド 0.08mg/L以下
32 亜鉛及びその化合物 1.0mg/L以下
33 アルミニウム及びその化合物 0.2mg/L以下
34 鉄及びその化合物 0.3mg/L以下
35 銅及びその化合物 1.0mg/L以下
36 ナトリウム及びその化合物 200mg/L以下
37 マンガン及びその化合物 0.05mg/L以下
38 塩化物イオン 200mg/L以下
39 カルシウム、マグネシウム等(硬度) 300mg/L以下
40 蒸発残留物 500mg/L以下
41 陰イオン界面活性剤 0.2mg/L以下
42 ジェオスミン 0.00001mg/L以下
43 2-メチルイソボルネオール 0.00001mg/L以下
44 非イオン界面活性剤 0.02mg/L以下
45 フェノール類 0.005mg/L以下
46 有機物(全有機炭素(TOC)の量) 3mg/L以下
47 pH値 5.8以上8.6以下
48 異常でないこと
49 臭気 異常でないこと
50 色度 5度以下
51 濁度 2度以下

私たちが飲んでいる水は、上記のような非常に厳しい基準をクリアしています。たとえばジェオスミン(No.42)や2-メチルイソボルネオール(No.43)は、水の臭みの原因物質です。

No.31までは人の健康に関わる項目で、No.32以降は味や匂い、色、泡立ちなど、私たちの生活に不具合を引き起こす可能性や水道施設に影響を与える可能性がある項目となります。

ビル管理法に基づいた水質検査

ビル管理法における水質検査16項目

私たちが普段使用している水の中で、自宅の次に多く接するのは外出先や勤務先の建物の水です。

日本では、不特定多数の人が出入りする建物を「特定建築物」と呼び、その建物の管理者は「ビル管理法」という法律に基づき、定期的に水質検査を行う義務があります。

対象となる施設は、興行場や百貨店、店舗内、事務所、学校、ホテルなどになります。規模としては特定用途に使われる面積が百貨店などの場合は3000㎡以上、学校の場合は8000㎡以上です。

ビル管理法では、先ほど説明した51項目のうち、16項目が水質検査の対象となります。
これには、飲料水に必要な13項目に加えて、水道の配管などから由来する物質に関する項目が含まれています。
該当する施設では、6ヶ月ごとに検査を行う必要がありますので、建物管理者は忘れずに行うように心掛けましょう。

1 一般細菌 100以下(CFU/mL)
2 大腸菌 検出されないこと
6 鉛及びその化合物 0.01mg/L以下
9 亜硝酸態窒素 0.04mg/L以下
11 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 10mg/L以下
32 亜鉛及びその化合物 1.0mg/L以下
34 鉄及びその化合物 0.3mg/L以下
35 銅及びその化合物 1.0mg/L以下
38 塩化物イオン 200mg/L以下
40 蒸発残留物 500mg/L以下
46 有機物(全有機炭素(TOC)の量) 3mg/L以下
47 pH値 5.8以上8.6以下
48 異常でないこと
49 臭気 異常でないこと
50 色度 5度以下
51 濁度 2度以下

水質検査を行い、これらの基準を満たさない場合は、ただちに改善する必要があります。

前回の検査が基準内だった場合、次回の検査で免除される5項目

前回の検査で全ての項目が基準値内にある場合、以下の項目は次回の検査で免除されます。

  • 鉛及びその化合物
  • 亜鉛及びその化合物
  • 鉄及びその化合物
  • 銅及びその化合物
  • 蒸発残留物

ただし、免除されるのは次回までで、その次の検査では再び検査対象となります。
全て基準値内を維持している場合は、これら項目は1回おきに実施となるということです。

消毒副生成物に関する定期検査12項目

先述の16項目の他に、毎年6月1日から9月30日の間に以下12項目の定期検査が義務付けられています。

10 シアン化物イオン及び塩化シアン 0.01mg/L以下
11 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 10mg/L以下
21 塩素酸 0.6mg/L以下
22 クロロ酢酸 0.02mg/L以下
23 クロロホルム 0.06mg/L以下
24 ジクロロ酢酸 0.03mg/L以下
25 ジブロモクロロメタン 0.1mg/L以下
26 臭素酸 0.01mg/L以下
27 総トリハロメタン 0.1mg/L以下
28 トリクロロ酢酸 0.03mg/L以下
29 プロモジクロロメタン 0.03mg/L以下
30 ブロモホルム 0.09mg/L以下
31 ホルムアルデヒド 0.08mg/L以下

これらの項目は、人の健康に関連するものです。
この検査では、水に添加される消毒剤が水に含まれている有機物と反応して有害な物質が発生していないかを確認するために行われます。

井戸水を使用している場合は追加で7項目行う

建物では、地下水や井戸水を水源として使用している場合もあります。水道水の場合と比べて検査の頻度は少なく、3年に1回行われます。
忘れずに定期的な検査を行うようにしましょう。

14 四塩化炭素 0.002mg/L以下
15 1,4-ジオキサン 0.05mg/L以下
16 シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2ジクロロエチレン 0.04mg/L以下
17 ジクロロメタン 0.02mg/L以下
18 テトラクロロエチレン 0.01mg/L以下
19 トリクロロエチレン 0.01mg/L以下
20 ベンゼン 0.01mg/L以下
45 フェノール類 0.005mg/L以下

雑用水の水質検査

飲料水以外に、雑用水の検査も必要です。雑用水は、水洗トイレや冷却・冷房、散水などの目的で、再生水や雨水、下水や産業廃水など、水道水よりも品質の低い水を指します。
雨水や再生水を雑用水として使用する場合、以下の項目の水質検査を行う必要があります。ただし、水道水を使用する場合は検査の必要はありません。

散水、修景、清掃用水の水質検査

※し尿を含む水を原水として使用しないこと

7日以内ごとに一回

pH値 5.8以上8.6以下
臭気 異常でないこと
外観 外観ほとんど無色透明であること

7日以内ごとに一回

大腸菌 検出されないこと
濁度 2度以下

水洗便所用水の水質検査

7日以内ごとに一回

pH値 5.8以上8.6以下
臭気 異常でないこと
外観 外観ほとんど無色透明であること

2ヶ月以内ごとに一回

大腸菌 検出されないこと

水質検査の流れ

水質検査では採水と、検査室での水質検査の2ステップで行われます。水質検査の流れについて、一例を紹介します。

水道水の採水

水道水の放水

水道水を採水する前に、5分ほど放水して水質を安定させます。

気温と水温の測定

採水時の気温と水温を測定します。

pHの測定

水道水のpHを調べるために、pH計を使用して水質が中性かどうかを確認します。

DPD検査

水道は水道水中の大腸菌や細菌を殺菌するため、消毒剤の塩素を使用します。

DPD粉末という試薬を水道水に加えると、残留塩素が反応して水が赤く変色します。この変色の程度から、消毒が効果的に行われているかを確認します。

採水

採水びんも重要で、一部の検査項目では採水びん自体が物質を含んでしまう可能性があることから各項目に対応した採水びんを使用します。そのため、検査項目が多い場合は複数のびんを用意して採水することがあります。

採水した後は水質検査に移ります。

水質検査

水質検査では、採水した水をそのまま検査しません。ろ過や加熱、濃縮、薬品の添加といった前処理が行われます。その後、実験者や専用の機器を使用して検査が行われます。

そのため、採水から結果が出るまでには2日かかる場合もあります。代表的な検査の流れを紹介します。

味や匂いの検査

この検査では、水を約45度のお湯で10分ほど温めて、匂いを嗅いだり口に含んだりします。異常があればすぐにわかります。

色度や濁度の検査

この検査では、水道水が色付いていたり濁っていないかを確認します。水を特別な瓶に入れ、専用の機器を使用して、自動的に水を吸い上げて計測します。何も異常がなければ正常と表示されます。

イオンクロマトグラフ検査

イオンクロマトグラフ検査では、目に見えない粒子でも問題を引き起こすことがあるため、水をフィルターで濾過する前処理が行われます。具体的には、注射器で水を吸い上げてフィルターに通し、専用の容器に入れます。

イオンクロマトグラフ法では、水中に含まれる陽イオンや陰イオンの量を調べることができます。例えば、ナトリウムやカルシウム、マグネシウムなどの陽イオン、塩化物や塩素酸、アンモニウムなどの陰イオンが検出されます。

水の硬度は、水中のカルシウムやマグネシウムの量によって判断され、軟水や硬水の分析も行われます。日本の水道水はほとんどが軟水であり、ミネラルウォーターはミネラルが豊富なので硬水となります。

このような水質検査を行うことで、水の安全性を確認しています。

水質検査は専門業者やビル管理士のみが行える

水道水の検査は専門的なものであり、一般の人が簡単に行うことはできません。商業施設やビルなど、多くの人が利用する建物の水質検査は、専門業者やビル管理士が行います。実際にビル管理士は一つの建物に1人しかいないことが一般的であり、一人で行うのは大変なことから、ほとんどの場合は専門業者に依頼することになります。

検査結果の保存期間は5年間

水質検査を行った後は、検査結果報告書を都道府県の管轄の保健所に提出する必要があります。また、提出後もビルの管理者や専門業者は、その結果報告書を5年間保管しなければなりません。突然結果報告書を提出するよう求められる場合もありますので、しっかりと保管しておきましょう。

報告書を提出しなかったり、虚偽の報告をした場合は、罰金などの罰則が課される可能性があるため、注意が必要です。

当社の強み・メリット

当社は水質検査も行っており、以下のような強みがあります。

  • 特に愛知県においては拠点数が多く、何かあった時にすぐに駆け付けることができます
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まとめ

日本の水道技術は非常に高く、ご紹介した51項目の検査基準もその一つです。この基準に従って、水道水は私たちが飲む前に検査されます。

しかし、基準を定めていても、建物の管理者がルールを破ったり、検査を怠ったりすると意味がありません。

建物の管理者は水道法では51項目の検査、ビル管理法では16項目の検査が義務付けられていることを理解しておきましょう。

水質検査にお困りの方は、下記リンクからぜひぜひコニックスまでお問い合わせください。

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<当社許認可・保有資格の例>

  • 建物環境衛生総合管理業 愛知県18総第8号
  • エコチューニング事業者認定 第170087号
  • 警備業 第54000058号
  • 一般建設業(般-3)第39090号

<当社従業員保有資格の例>

  • 清掃作業監督者
  • 建築物環境衛生管理技術者
  • 警備員指導教育責任者